1990年9月 GREEN AGE
樹木図鑑や植物図鑑はさまざまな手法をこらして出版されているが、本書の特徴はクライメートゾーン(植栽気温帯)を樹種ごとに掲載していることである。樹木の植栽は適地適木を基礎とするが、植栽樹種の多様化、植栽地域も広範囲にわたり、無理な植栽が目立つ。せっかく植えた樹木が枯れた等々の話を各地で聞くが、これらはクライメートゾーンの誤りによるものだ。本書は、それぞれの樹木が生育可能かどうかを判断する目安として、全国1,272地点の年最低気温の平均値、標高、緯度経度のデータを収集、日本とアメリカを対比している。
植物は環境条件によって当然生育が左右される。なかでも異常低温が枯死の主因をなすものだ。本書はそれぞれの土地の年最低気温に着目し、その土地にどんな植物が生育できるかを判断する素材を提供しているものだ。しかし植物が生育するには耐寒性の問題だけではない。暑さや積雪等、さまざまな要因があるだろう。 本書に収載された植物は162属、450種、それぞれに生育条件、土壌条件、美性・性質を生かす使い方、管理方法、繁殖方法、植栽時の注点などが記載されている。
(石井氏)
監修・林弥栄、故小形研三
B5判、368頁/アボック社出版局