1984年5月28日 朝日新聞
エドワード・カーティス(一八六八―一九五二年)。肖像・風景写真の分野で知られた写真家だったが、モチーフをインディアンにしぼってから、一躍世界的に名声を博するにいたった。
カーティスがインディアンに関心をもったきっかけは、一九〇〇年、モンタナ州のアブサロケ(別名クロウ)族の指定居住地に入り、その生活をつぶさに見たことだった。以来、インディアンを訪ねて回り、『北米インディアン』全二十巻にまとめた。三十年を費やしての労作である。
この写真は、『北米インディアン』の別冊ポートフォリオの中から代表作百五点を選び、二十巻の構成を生かして南西部Ⅰ、平原、高原、北西海岸、カリフォルニア、南西部Ⅱ、北極・亜北極という風に、文化圏ごとに配列されている。地域によってカーティスの主題も違う。大平原や高原地方では老いたる戦士や馬に乗った正装の戦士、南西部の砂漠地帯では住居、女性の肖像が多い。
カーティスの視点には、「滅びゆく民」という面があったにしても、現在、民俗自決を求めてたたかっているインディアンへの理解に、われわれを導くだろう。写真は「アパッチ族の赤ん坊」。
(金関寿夫、横須賀孝弘訳、富田虎男監修、アボック社出版局)