1984年3月 アサヒカメラ
「森へ」 ダリウスキンゼイ
「北米インディアン悲詩」 エドワード・カーティス
ほぼ同時期に活躍したアメリカの写真家二人の作品集である。昨年、本誌でもとりあげたキンゼイは風景、人物を緊迫感あふれる構図で表現しており、原生林を伐採するきこりの写真で知られている。アメリカでは四千五百枚のコレクションから選んだ作品集が一九七五年に出版され、歴史的記録写真として反響をよんだ。日本では初めての出版である。
キンゼイの写真が寸分も揺るがない構成で表現されているのに対して、カーティスの写真にはロマンチックな甘さがただよっている。
一八九八年からインディアン文化を撮り始め、後に「北米インディアン」(全二十巻)にまとめた。しかし、その写真集は長い間、注目されることなく、一九六〇年代後半になってやっと日の目を見た。今日では、インディアンの歴史的写真としは最高の水準とされている。
「森へ」には、作家・中上健次、詩人・吉増剛造らの座談会、「北米インディアン悲詩」には、アメリカでインディアン問題に取り組んでいるイレーヌ・アイアンクラウドらの座談会が別冊として添えられている。いずれも、アボック社刊。
「森へ」=縦32.5×横26センチ、276ページ。「北米インディアン悲詩」=縦32.5×横26センチ、175ページ。