1984年2月13日 神奈川新聞
滅びゆく民の声が・・・
写真を撮られるとカメラの目に魂が盗まれてしまうという、インディアンの間の迷信も、世紀の変わり目ごろにはかなりなくなっていたという。しかし、自分たちの世界に入り込み私生活を侵そうとする人間への疑いは根深く、著者カーティスにも、四回にわたる狙撃などの危険はあった。その疑心と不安を、カーティスは克服し、ついには、ある首長に「この男はわれわれと同類だ」とまで言わせた。
写真集「北米インディアン」全二十巻をまとめながらも忘れられていたカーティスが再び評価され出したのは半世紀後の一九六〇年代後半から。百五点を収めたこの写真集は、滅び行く民とその生活への一つの解釈になっている。