1981年12月 ART VISION
三日月童子に鉄腕アトム、笛吹童子が笛を吹き、鞍馬天狗が馬を駆る。
通りすぎた時の流れに、すぎさりし人は数知れぬ。銀幕のヒーローも隣の家の叔父さんも、すべては自前舞台の主役なり。
手の平いっぱいの想い出をひろいあつめてつかんでみれば、指のあいまから時がこぼれ落ちていく。
三十よわいの人生に、何は無くとも出会い別れた人がある。
想い出は走馬灯のごとくはかなく、あらわれてはきえる人の顔、顔、顔。
488枚のイラストに描かれた人の波、語られる昔日は足音も無き時の舞い。 絵日記につづる作者の心情は、飾らぬ姿浮きぼりに、半生の哀歓ほのぼのと、安らぎ励ましとを与えている。
〈アボック社出版局。A5判〉