1981年10月18日 夕刊フジ
小四でストリップ見物して…
読みどころ
初めてストリップ・ショーを見たのは、小学四年生のときだったという。いつものように家からくすねた小銭で、一年生の弟といっしょに、映画館にもぐり込んだときのことだった。
脱脂粉乳のミルクをふちの欠けたお椀でもらったときの恥ずかしさ、プロレスごっこや神相撲で遊びほうけた小学校時代。中学時代は《長ぐつ三銃士》で通し、高校を出る前には秘かに思う少女もいた。
著者は昭和十八年生まれ。アルバイト暮らしに追われた学生時代から絵を描き始め、臨時雇いとして勤めた出版者での争議をきっかけに、画家として身を立てることを決心したようだ。勤めだしてからの人間模様、パリやニューヨークでの貧しい生活ぶりも、いきいきとしている。
思い浮かんだ出来事を、ボールペンで描いた青年画家の半生の絵日記。四八八ページ全部が、シャガールを思い起こさせる夢と詩情あふれるイラストで埋まっている。説明文にも哀歓が漂っており、優しい著者の人柄がうかがえて楽しい。
寸感
過ぎし日は美しいというが、多くの人にとっては恥の積み重ね。出版する気などなく、シェルブールでの手すさびに描いたというだけに飾り気がない。
蛇足
神奈川県逗子市の戦後や“安後派”青年の風俗史ともなっている。