1997年 (掲載誌不明)
植物学者の橋本出郎さん(84)はこのほど、研究から執筆まで十年以上を費やした二千ページ余りの大作「ブラジル産薬用植物事典」を出版した。橋本さんに協力してきた博物研究会(越村建治会長)の 関係者は「ブラジルの薬用植物を広く網羅しており、もうこれ以上のものはできないだろう」と話している。
一冊五百レアルで受付
「薬用植物事典」は、ブラジル産の薬用植物二千百六十八種を掲載。各種類について、学名、名前の登場する文献名、異名、形態、用途などを紹介している。検索しやすいように科、属ごとに配列した。後半部分には、橋本さんの手書きの植物図や各種類の分布図をふんだんに付けている。一般の人から専門家まで広い用途が可能なのが特徴という。
これまでにブラジルでも薬用植物事典は作成されているが、植物の分類がはっきりしなかったり、古い学名をそのまま使っていたりした。このため、「きっちりしたものを自分で作ろうと思った」という。
一九八一年から、日本お豊田財団の研究助成を受け、資料の整理など事典の準備に取りかかった。「文献からカードにデータを写し、これを年代順に並べなおす。コンピューターを操作できれば、もっと早かったのだろうけど、これに一番手間がかかった」。
標本の収集に出かける一方、家にいる時は、半日は事典の仕事をしていた。九〇年から五年がかりで執筆し、ようやく出版にこぎつけた。「今、人のできないことをやったと気分で、満足している」。
事典は全部でし七百部を印刷した。五百部を日本で、二百部をブラジルで販売する。日本では丸善が取り扱う。ブラジルで購入を希望する人の問い合わせ先は、博物研究会のアライ・ジュリさん(278・7953)。定価は七万二千円だが、ブラジルは予約期間に限り、五百レアルで手に入る。
また、六月三十日にはイタケーラ区ジャメス・リベイロ・ライト街六一八番で、イタケーラ標本館の仮落成式を兼ねて、事典の出版記念を開く予定。開始時間は未定。
(写真:大著を持つ橋本さんと関係者)