(掲載年不明)4月号 グリーンエージ
キンゼイの撮った巨樹たち
一冊の写真集が、これほど雄弁にアメリカ西部の開拓史を物語った本も珍しい。それは想像をこえた原生林、巨樹と人との格闘のドラマである。そこに撮された映像は、巨樹たちの受難の歴史でもあったが、フロンティアというもののものすごさである。大自然、巨樹群をなぎ倒し、そして伐り拓く、その前でポーズをとる開拓者の勝利の姿が焼きついている。しかし恐ろしいほど巨大な樹木の前で人はなんと小さいことか。1枚1枚のガラスの乾板が歴史を刻む。それはアメリカそのものの実相だ。中上健次氏は「写真が動き出して、なにやらこの世ならざる世界を覗き見た気がしてくる」といった。そんな凄惨な現場写真である。歴史の歯車はいま何を語っているのか。
276頁、写真185点