1990年1月29日号 北海道新聞
まるで葉先を切り取ったような歯の形状からハンテンボク(袢纏木)とも呼ばれるユリノキ。胸高直径三・六メートル、樹高六十メートルもの巨木になり、チューリップそっくりの花からはあふれたみつがしたたり落ちる。樹皮や根は解熱剤から抗がん剤にまで使われ、軽く強い材は昔から丸木舟や馬車のボディーに使われてきた。この恵み豊かなユリノキに魅せられた岩手緑化研究会長の著者が、森林生態学、植物化石学、薬用植物学の専門家の寄稿を得、長年の研究成果を博物誌としてまとめた。日本のユリノキは化石植物として出土するほかはすべて渡来木。全国ユリノキウォッチングガイド付き。
(アボック社出版局)