1984年2月27日 朝日新聞
アメリカ西部開拓期から半世紀にわたって活躍した「森の写真家」ダリウス・キンゼイ(1868-1945年)の作品集。
アメリカでは1975年に出版されて以来、版を重ね、その名声だけは日本にも伝わってきていたが、作品をまとめて見る機会がなかった。圧巻である。
作品集は二部に分けられている。第一部が「家族のアルバムと初期作品」。キンゼイの写真は、妻タビサの優れた現像技術に負うところが多い。第二部が「偉大なる歳月」。キンゼイが撮りためた写真は約4500点にのぼり、そのほとんどが一人のコレクターによって25年間、保管されていた。
その膨大なコレクションに取り組んだのが二人の写真家、D・ボーンとR・ペチェック。5年の歳月をかけて編集した。二人は作品を編集するだけでなく、キンゼイが撮影した土地を訪ねて3年がかりの現地調査もしている。
こうして立体的に組みあげられたキンゼイの世界は、壮大なドラマである。原生林を伐採する木こりたちと巨木。ここにとらえられているのは、まさしく厳しい開拓者の生活そのものなのだが、巨木に立ち向かう人びとの表情には、どこか、ゆとりを感じさせる。たくましいエネルギーが自然と共存しているかのようだ。
写真は「木こりと娘たち」 (アボック社出版局)