本書「はじめに」より
帰化植物は最も身近な植物!
精緻なアートで見る
世界に類のない植物図譜!
帰化植物にはコンクリートで囲まれた都市空間のようにかつては存在しなかった立地を生育の場としている種も多い。人間が植えた植物を別とすれば都市でみる植物の大半は帰化植物といってもよい。今や国民の半分以上がそうした都市を生活の場とする日本にあって、身近な植物といえばまずは帰化植物なのだ。植物が皆無の砂漠にも比せられる都市に、オオイヌノフグリやヒメオドリコソウ、メキシコマンネングサなど、多様な緑が織りなす叢群の存在意義は大きい。
滅多に目に触れることもない深山の稀産種についての知見も重要だが、大多数が身近な存在である帰化種のひとつひとつについてもその形状や暮らしのあり様などを知り、知見を増すことにも同様の意義が認められるのだ。さらにいうなら、帰化植物に目を向けることなしに、今日、日本の自然がおかれている現状を正しく理解することもむずかしいのではないだろうか。
本書、『日本の帰化植物図譜』は、印象に強く残る写実的・芸術的彩色画を通して、私たちに帰化植物のもつ特徴を克明に伝えるものであり、帰化植物の何たるかを知る上で、大きな意味をもつ刊行物であるということができる。
世界でも例をみない、帰化植物だけの芸術性をも充たす図譜の出現はまちがいなく日本における帰化植物への関心の深さを反映している。本書が大方の期待に応え、帰化植物への一層の理解に大いに役立つ一書となることを願ってやまない。